「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「パブリシティ権」です。
大まかに説明すると
パブリシティ権は、有名人の氏名や肖像(写真・イラストなど)が持つ、顧客を惹きつける力(顧客吸引力)から生じる経済的な利益を、本人が独占的に利用できる権利です。
肖像権の一部であり、特にその経済的側面に焦点を当てています。
例えば、企業が有名人の写真を無断で広告に使うことは、このパブリシティ権の侵害にあたります。
有名人の「顔や名前」という財産を守るための権利です。
はじめに
前回の「肖像権」の記事で、肖像権にはプライバシーを守る側面と、経済的な価値を守る側面があると学びました。
プライバシーを守るという側面がすべての人に関わるのに対し、「パブリシティ権」は、後者の側面、特に芸能人、スポーツ選手、文化人といった「有名人」に深く関わる権利です。
有名人の「顔」や「名前」が持つ特別な力と、それを守るルールについて解説します。
パブリシティ権とは?有名人の「名前と顔」が持つ経済的価値を守る権利
パブリシティ権とは、有名人などの氏名や肖像が持つ「顧客吸引力」を、無断で利用されない権利のことです。
少し言葉が難しいですが、「顧客吸引力」とは、「その人の名前や顔があるだけで、多くの人の関心を引き、商品が売れたり、サービスに人が集まったりする力」のことです。
例えば、
- 人気俳優がCMに出演すると、その商品の売上が伸びる。
- 有名なスポーツ選手がパッケージに印刷されたお菓子は、子供たちに大人気になる。
このように、有名人の氏名や肖像には、それ自体に「経済的な価値」があります。
パブリシティ権は、この経済的な価値(財産)を、本人(または契約した事務所など)がコントロールし、他人に勝手に使われないようにするための権利なのです。
この権利も肖像権と同様に、法律に明記されているわけではなく、判例によって確立されてきました。
肖像権とパブリシティ権の違い
2つの権利の関係を整理してみましょう。
肖像権(プライバシー権の側面)
- 目的: 個人の人格やプライバシーの保護。
- 対象: すべての人。
- 例: 一般人の顔を無断で撮影し、SNSに投稿する → 肖像権の侵害。
パブリシティ権(肖像権の経済的側面)
- 目的: 氏名・肖像が持つ経済的利益(財産)の保護。
- 対象: 主に有名人。
- 例: 有名なアイドルの写真を無断でTシャツにプリントして販売する → パブリシティ権の侵害。
つまり、パブリシティ権は、大きな枠組みである肖像権の中に含まれる、特に「財産的価値」に着目した権利と考えることができます。
どんな場合に侵害になるか?
パブリシティ権の侵害となるのは、主に「有名人の氏名・肖像を、商品の販売促進などの目的で、無断で利用する」ケースです。
単に有名人の写真を紹介するだけ(報道や批評など)では、必ずしも侵害になるとは限りません。
その有名人が持つ「顧客吸引力」を利用して、直接的に利益を得ようとする行為が問題となります。
具体的には、以下のようなものが典型例です。
- 有名人の写真を使ったカレンダーやグッズを無断で作成・販売する。
- 有名人の名前や写真を、企業のWebサイトや広告に無断で使用する。
まとめ
パブリシティ権は、有名人の「顔や名前」が持つ経済的な価値(顧客吸引力)を守るための権利です。
ITパスポート試験では、肖像権の一部であり、特に「有名人」の「経済的利益」を守る権利である、という点をキーワードとして覚えておきましょう。
有名人の写真や名前をビジネスで利用する際には、必ず正式な許可が必要となる、という基本を理解することが重要です。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類2「法務」
4. 知的財産権
目標「知的財産権にはどのような種類があり、何が法律で守られ、どのような行為が違法に当たるのかの基本を理解する。」
説明「コンピュータプログラムや音楽、映像などの知的創作物に関する権利は、法律で守られていることを理解する。」
(5) その他の権利
- 明文化された法律は存在しないが、判例によって認められた肖像権やパブリシティ権があること
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。