「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「判例によって認められた肖像権」です。
大まかに説明すると
肖像権は、自分の顔や姿を無断で撮影・公表されない、個人のプライバシーと尊厳を守るための権利です。
法律に明記はなく判例で確立されました。この権利は、プライバシー保護という「人格権」の側面と、有名人の肖像が持つ経済的価値を守る「財産権」(パブリシティ権)の側面を持ちます。
誰もが持つ基本的な権利であり、情報モラルの基本となります。
肖像権とは?「顔」や「姿」を無断で利用されないための権利
はじめに
スマートフォンで誰もが簡単に写真を撮り、SNSで発信できる時代になりました。
だからこそ、ITパスポート試験でも問われる「肖像権」は、IT社会を生きる私たちにとって必須の知識です。
今回は、すべての人が持つこの大切な権利の基本と、ITの世界で注意すべき点について解説します。
肖像権とは?
肖像権とは、自分の顔や姿を「みだりに撮影されない」「みだりに公表されない」という、プライバシーを守るための権利です。
皆さんも、知らないうちに自分の写真を撮られたり、勝手にインターネットに公開されたりしたら「嫌だ」と感じますよね。
その「嫌だ」という気持ち、つまり個人の人格的な利益を守るのが肖像権の基本的な考え方です。
この権利は、法律の条文に「肖像権」という言葉が書かれているわけではなく、過去の裁判の判決(判例)を通じて、社会のルールとして確立されてきました。
肖像権の2つの側面
肖像権は、大きく分けて2つの側面を持つと理解すると分かりやすいです。
1. 人格権としての肖像権
- 目的: 個人のプライバシーや尊厳、精神的な平穏を守ること。
- 対象: すべての人。一般人、有名人を問いません。
- 内容: 無断で撮影されたり、公表されたりしない権利。
2. 財産権としての肖像権(=パブリシティ権)
- 目的: 有名人の氏名・肖像が持つ経済的利益(顧客吸引力)を守ること。
- 対象: 主に芸能人やスポーツ選手などの有名人。
- 内容: 氏名・肖像を無断でビジネスに利用されない権利。
このように、パブリシティ権は肖像権という大きな枠組みの中にあり、特に「財産」としての価値に焦点を当てたものなのです。
どんな場合に侵害になるか?
肖像権(人格権)の侵害は、「本人の許可なく」「本人が精神的な苦痛を受けるような形で」撮影・公開された場合に問題となります。
侵害にあたる可能性が高い例
- 友人の変な顔の写真を、本人の許可なくSNSに投稿する。
- 街で見かけた人を無断で撮影し、個人が特定できる形でブログに載せる。
侵害にあたりにくい例
- お祭りなど、大勢の人が集まる場所での風景写真に、たまたま小さく人が写り込んでしまった場合。
- 事件や事故の報道で、公共の利益のためにやむを得ず個人が写ってしまった場合。
まとめ
肖像権は、IT社会における情報モラルの基本となる大切な権利です。
ITパスポート試験では、
①法律ではなく判例で認められた権利であること。
②プライバシーを守る「人格権」の側面が基本であること。
③有名人の経済的価値を守る側面が「パブリシティ権」につながること。
この3点を押さえておきましょう。
写真を撮るとき、公開するときには、常に相手への配慮を忘れないことが重要です。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類2「法務」
4. 知的財産権
目標「知的財産権にはどのような種類があり、何が法律で守られ、どのような行為が違法に当たるのかの基本を理解する。」
説明「コンピュータプログラムや音楽、映像などの知的創作物に関する権利は、法律で守られていることを理解する。」
(5) その他の権利
- 明文化された法律は存在しないが、判例によって認められた肖像権やパブリシティ権があること
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。