「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「意匠法」です。
大まかに説明すると
意匠法(いしょうほう)は、製品の「デザイン」を保護するための法律です。
ここでのデザイン(意匠)とは、物品の形状、模様、色彩といった、製品の見た目の美しさや格好良さを指します。
特許法が技術的なアイデアを守るのに対し、意匠法は機能ではなく外観を保護します。
例えば、スマートフォンの形や自動車のボディライン、アプリのアイコンなどが対象です。
優れたデザインは商品の魅力を高めるため、その模倣を防ぐ意匠権は、企業のブランド戦略において非常に重要な権利となっています。保護期間は出願日から最大25年です。
はじめに
皆さんが新しいスマートフォンやスニーカーを選ぶとき、何を基準に選びますか?
もちろん機能や性能も大事ですが、「見た目が好き」「デザインが格好いい」という理由で選ぶことも多いのではないでしょうか。
製品の「デザイン(見た目)」は、その商品の価値を大きく左右する重要な要素です。
この大切なデザインを、他人に真似されないように守るのが「意匠法(いしょうほう)」です。
今回は、このデザインの法律について詳しく見ていきましょう。
意匠法とは?
意匠法は、「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」を目的としています。
簡単に言うと、新しい優れたデザインを考えた人(創作者)に、そのデザインを独占的に使える権利(=意匠権)を与え、デザイン創作への意欲を高めるための法律です。
何が「意匠」として保護されるのか?
意匠法で保護される「意匠」とは、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義されています。 ポイントを分解してみましょう。
- 物品の…: 意匠は、必ず何らかの「物品(製品)」と結びついていなければなりません。絵画のような芸術作品そのものではなく、あくまで工業製品のデザインが対象です。
- 形状、模様、色彩: デザインを構成する要素です。
- 形状: スマートフォンの丸みを帯びた形、椅子の独特なフォルムなど。
- 模様: 文房具や布地に描かれた柄など。
- 色彩: 製品に使われている色の組み合わせなど。
- 視覚を通じて美感を起こさせるもの: 目で見て「美しい」「格好いい」「お洒落」と感じられるような、美的価値があることが求められます。
最近では、法律が改正され、建物(例:特徴的なデザインの店舗)や、画像(例:アプリの操作画面やアイコン)も、物品と切り離して意匠として保護できるようになり、IT分野での重要性がさらに増しています。
意匠権を取得するとどうなる?
特許などと同じように、デザインを創作しただけでは権利は発生しません。
特許庁に出願し、審査を経て登録されることで意匠権が生まれます。
意匠権を取得すると、出願日から最大25年間、その登録された意匠(およびそれに似たデザイン)を独占的に実施できます。
他人が無断で同じデザインや似たデザインの製品を製造・販売した場合、それをやめさせたり、損害賠償を請求したりできます。
IT分野と意匠法
ITの世界でも、デザインは非常に重要です。
- ハードウェアのデザイン: パソコンやスマートフォンの本体、マウスやキーボードの形状など。Apple製品がその典型例ですね。
- GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース): アプリのアイコンや、Webサイトのボタン配置、操作画面全体のデザインなど。ユーザーの使いやすさや、サービスのブランドイメージに直結します。
優れたUI/UX(ユーザー体験)を提供するためには、機能だけでなく、直感的で美しいデザインが不可欠です。
意匠法は、こうしたデジタル世界の「見た目」を守ることで、ITサービスの競争力を支えているのです。
まとめ
意匠法は、製品の「デザイン」という見た目を保護する法律です。
特許法が「技術(中身)」を守るのに対し、意匠法は「外観(見た目)」を守ると対比で覚えると分かりやすいでしょう。
保護対象には、スマホのような物理的な製品だけでなく、アプリのアイコンやWebサイトの画面デザインといった「画像」も含まれること、そして保護期間が「最大25年」であることを、ITパスポート試験対策としてしっかり押さえておきましょう。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類2「法務」
4. 知的財産権
目標「知的財産権にはどのような種類があり、何が法律で守られ、どのような行為が違法
に当たるのかの基本を理解する。」
説明「コンピュータプログラムや音楽、映像などの知的創作物に関する権利は、法律で守
られていることを理解する。」
(2) 産業財産権関連法規
- 発明やデザインなどを登録することによって守られる権利があること
- 無断使用は違法であること
- AI が学習に利用するデータ、AI が生成したデータについて、それぞれ産業財産権の観点で留意する必要があること
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。