「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「ビジネスモデル特許」です。
大まかに説明すると
ビジネスモデル特許とは、ビジネスの新しい「仕組み」や「方法」を、コンピュータやインターネットなどのIT技術を使って実現した発明に与えられる特許のことです。
単なる商売のアイデアだけでは特許になりませんが、そのアイデアをIT/ICTでどのように実現するかが具体的であれば、特許として認められる可能性があります。
例えば、ネット通販サイトの「ワンクリック注文」の仕組みや、オンラインでの広告配信システムなどが有名です。
ITを活用した新しいサービスが次々と生まれる現代において、非常に重要な特許の一つです。
はじめに
インターネットで本を買うとき、ボタンを一度押すだけで注文が完了する「ワンクリック注文」。
今では当たり前の機能ですが、これも昔は画期的な「発明」でした。
このように、IT技術(IT/ICT)を活用した新しいビジネスの仕組み。
これを保護するのが、今回解説する「ビジネスモデル特許」です。
ITパスポート試験でも、現代のビジネスを理解する上で欠かせないキーワードとして注目されています。
一体どのようなものがビジネスモデル特許になるのか、具体例を交えながら見ていきましょう。
ビジネスモデル特許とは?
ビジネスモデル特許とは、その名の通り「ビジネスモデルに関する発明」に与えられる特許のことです。 ただし、ここで非常に重要な注意点があります。
それは、「単なるビジネスのアイデア」そのものは特許にならないということです。
例えば、「インターネットでお客さんを集めて、安く商品を売る」というアイデアだけでは、誰もが思いつく可能性があり、特許として保護することはできません。
ビジネスモデルが特許として認められるためには、そのビジネスモデルが「IT/ICT(情報通信技術)を使って、コンピュータ上でどのように実現されているか」という、具体的な技術的仕組みが伴っている必要があります。
つまり、「ビジネスアイデア」+「IT/ICT技術による実現手段」= ビジネスモデル特許という関係式が成り立つのです。
ビジネスモデル特許の具体例
言葉だけだと難しいので、有名な例を見てみましょう。
- Amazonの「ワンクリック注文」
- ビジネスアイデア: 毎回住所やクレジットカード情報を入力する手間を省き、簡単に買い物ができるようにしたい。
- IT/ICT技術による実現手段: 事前に登録された顧客情報(ID、パスワード、配送先、支払情報)をサーバーに保存しておき、顧客が「ワンクリック」ボタンを押すと、その情報と商品情報が自動的に結びつけられ、注文処理が実行されるシステム。
- この「システム」の部分が技術的な発明として評価され、特許として認められました。
- Googleの「検索連動型広告」
- ビジネスアイデア: ユーザーが検索したキーワードに関連する広告を表示すれば、興味を持ってもらいやすいはずだ。
- IT/ICT技術による実現手段: ユーザーが入力した検索キーワードを分析し、あらかじめ広告主から登録されているキーワードと照合。関連性が高いと判断された広告を、検索結果と一緒に表示するアルゴリズムとシステム。
- これも、広告を配信する「仕組み(システム)」が特許の対象です。
なぜIT分野で重要なのか?
現代のビジネス、特にIT業界では、画期的なサービスやアプリが次々と生まれています。
これらのサービスの多くは、物理的な「モノ」ではなく、「情報の流れ」や「処理の仕方」といった「仕組み」そのものが価値を持っています。
もし、苦労して考え出したサービスの仕組みを簡単に真似されてしまったら、開発した企業は大きな損害を受けます。
ビジネスモデル特許は、このようなITを活用したサービスの「仕組み」という知的財産を守り、企業が安心して新しいサービス開発に挑戦できるようにするための、重要な盾の役割を果たしているのです。
まとめ
ビジネスモデル特許は、単なる商売のアイデアではなく、IT/ICT技術を使って実現された具体的な「ビジネスの仕組み」に対する特許です。
ITパスポートの学習では、「ビジネスモデル特許=IT/ICTを活用した発明」という点をしっかり押さえてください。
そして、ワンクリック注文のような具体的な例を一つ覚えておくと、イメージが掴みやすく、忘れにくくなるでしょう。
新しいサービスを考えるとき、「これをIT/ICTでどう実現しよう?」と考える視点が、ビジネスモデル特許への第一歩となります。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類2「法務」
4. 知的財産権
目標「知的財産権にはどのような種類があり、何が法律で守られ、どのような行為が違法
に当たるのかの基本を理解する。」
説明「コンピュータプログラムや音楽、映像などの知的創作物に関する権利は、法律で守
られていることを理解する。」
(2) 産業財産権関連法規
- 発明やデザインなどを登録することによって守られる権利があること
- 無断使用は違法であること
- AI が学習に利用するデータ、AI が生成したデータについて、それぞれ産業財産権の観点で留意する必要があること
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。