「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「特許法」です。
大まかに説明すると
特許法(とっきょほう)は、新しく価値のある「発明」を保護するための法律です。
ここでの発明とは、自然法則を利用した技術的なアイデアを指します。特許庁に申請し、新規性(新しさ)や進歩性(優れていること)などの要件を満たすと認められると「特許権」が与えられます。
特許権を得ると、一定期間(出願から20年)、その発明を独占的に実施できます。
IT分野では、ソフトウェアのアルゴリズムやビジネスの新しい仕組み(ビジネスモデル特許)などが対象となり、企業の競争力を守る重要な役割を果たします。
はじめに
皆さんが毎日使っているスマートフォン。その中には、数えきれないほどの新しい技術が詰まっています。
画面をタッチして操作する技術、キレイな写真を撮る技術、高速で通信する技術……。
これらの画期的なアイデアが、もし誰でも簡単に真似できてしまったらどうなるでしょうか?
今回は、そんな「発明」を守るための法律である「特許法」について、ITパスポート講師の視点から分かりやすく解説します。
特許法は、産業財産権の中でも特に重要な法律です。
特許法とは?
特許法は、「発明を保護し、その利用を図ることで、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」を目的とした法律です。
少し難しい言葉が並んでいますが、ポイントは以下の2つです。
発明の保護
新しい発明をした人(発明者)に、一定期間その発明を独占的に使える権利(=特許権)を与える。
発明の利用
保護する代わりに、その発明の内容を世の中に公開してもらう。これにより、他の人がその技術をヒントに、さらに新しい発明を生み出すきっかけを作る。
つまり、発明者を守りつつ、社会全体で技術を進歩させていこう、という考え方に基づいています。
何が「発明」として保護されるのか?
特許法で保護される「発明」とは、単なる思いつきやアイデアではありません。
法律上、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。 これを分解してみましょう。
自然法則を利用した
物理や化学の法則など、自然界のルールに基づいている必要があります。例えば、「念力で物を動かす方法」のような超能力や、「新しい計算のやり方」そのものは自然法則ではないので特許になりません。
技術的思想の創作
具体的に実現できる、技術的なアイデアである必要があります。単なる芸術作品や、個人のスキル(例:すごい速さでキーボードを打つ技術)は対象外です。
高度のもの
誰でも簡単に思いつくようなものではなく、ある程度のレベルの高さが求められます。
IT分野では、ソフトウェアに関連する発明も特許の対象となります。
例えば、コンピュータを効率的に動かすための新しいアルゴリズムや、特定の課題を解決するためのユニークな情報処理システムなどがこれにあたります。
特許権を取得するまでの流れと効果
発明をしても、自動的に特許権がもらえるわけではありません。
- 出願: 発明の内容を詳細に書いた書類を特許庁に提出します(出願)。
- 審査: 特許庁の審査官が、その発明が特許の条件(新しさ、進歩性など)を満たしているかを審査します。
- 登録: 審査をクリアすると、特許として登録され、特許権が発生します。
特許権を取得すると、出願日から20年間、その発明を独占的に使うことができます。
他人が無断でその技術を使って製品を作ったり売ったりした場合、それをやめさせたり(差止請求)、損害の賠償を求めたり(損害賠償請求)することができます。
ITパスポート試験でのポイント
ITパスポート試験では、特許法が「発明」という「技術的アイデア」を保護するものであることをまず押さえましょう。
そして、その発明にはソフトウェアも含まれること、特にITを使った新しいビジネスの仕組みである「ビジネスモデル特許」も重要なテーマであることを理解しておくことが大切です。
また、保護期間が「出願から20年」であるという数字も頻出なので、しっかり覚えておきましょう。
まとめ
特許法は、新しい「発明」を守ることで、技術開発への意欲をかき立て、産業を発展させるための重要な法律です。
IT企業にとっては、自社で開発した独自の技術を守り、競争で優位に立つための強力な武器となります。
私たちの便利な生活は、この特許法によって守られた無数の発明の上に成り立っているのです。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類2「法務」
4. 知的財産権
目標「知的財産権にはどのような種類があり、何が法律で守られ、どのような行為が違法
に当たるのかの基本を理解する。」
説明「コンピュータプログラムや音楽、映像などの知的創作物に関する権利は、法律で守
られていることを理解する。」
(2) 産業財産権関連法規
- 発明やデザインなどを登録することによって守られる権利があること
- 無断使用は違法であること
- AI が学習に利用するデータ、AI が生成したデータについて、それぞれ産業財産権の観点で留意する必要があること
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。