
「IT / ICT Glossary」シリーズでは、主に国家資格「ITパスポート(iパス)」に関連した用語を解説致します。
iパスの学習範囲は「企業と法務」など、システム以外の分野も含まれていますので、業種・職種に関わらず、社会生活を送る上で、とても参考になると考えています。
今回のキーワードは「変動費率」です。
目次
大まかに説明すると
変動費率は売上高に対する変動費の割合を示し、企業の収益性分析、予算管理、価格決定、意思決定に活用されます。
売上高が変動しても変動費率は一定であり、この率を用いることで、売上高に応じた変動費や損益分岐点売上高を算出できます。
変動費率は、限界利益の把握やコスト構造の比較にも役立つ重要な指標です。
変動費率とは
変動費率は、売上高に対する変動費の割合です。
計算式は、変動費率=変動費÷売上高で表されます。
費用には、毎月一定額かかる固定費と売上高に応じて変動する変動費があります。
変動費は、販売量が増えるほど増え、販売量が減ると少なくなる費用です。
ですが、変動費率は売上高が変動しても同じ数値になります。
なぜなら、売上高が増減すれば、それに合わせて変動費も増減するので、常に一致するためです。
変動費率を算出する目的
以下の通り、変動費率は企業の経営状況を把握し、将来の計画を立て、適切な意思決定を行うための重要な指標と言えます。
1. 収益性分析のため
利益構造の把握
売上高に占める変動費の割合を示すため、売上が変動した際に利益がどのように変化するかを分析できます。
変動費率が低いほど、売上が増加した際の利益の伸びが大きくなります。
限界利益の把握
限界利益(売上高 - 変動費)を分析する上で、変動費率は重要な指標となります。
限界利益は、固定費を回収し、利益を生み出す源泉となるものです。
損益分岐点分析
損益分岐点売上高を計算する際に、変動費率が不可欠です。
損益分岐点は、損失と利益の境目となる売上高を示し、経営目標の設定やリスク管理に役立ちます。
2. 予算管理・業績評価のため
予算策定
売上高の予測に基づいて、変動費の予算を策定する際に使用します。
過去の変動費率を参考に、将来の変動費を合理的に見積もることができます。
実績評価
実際の売上高と変動費を比較し、予算との差異を分析する際に役立ちます。
変動費率が大きく変動している場合は、その原因を究明し、対策を講じることができます。
3. 価格決定のため
目標利益の確保
製品やサービスの価格を設定する際に、変動費率を考慮に入れることで、目標とする利益を確保できるような価格設定が可能になります。
4. 意思決定のため
新規事業の採算性分析
新規事業の売上予測と変動費の見込みから変動費率を算出し、事業の採算性を評価する際に利用します。
コスト構造の比較
自社の変動費率を同業他社と比較することで、自社のコスト構造の特徴や改善点を見つけることができます。
損益計算書から変動費率を求める
変動費率や損益分岐点売上高などを求める問題では、提示された損益計算書など資料の数値をもとに計算するのが基本です。
たとえば、ジュースを1杯500円で売り、変動費となる材料費が1杯あたり100円かかるとします。
固定費は、賃料や光熱費、人件費などで毎月20万円と記載されています。
この際、ジュースを500杯売った月と1,000杯売った月の変動費率を求めてみましょう。
・500杯売った場合
売上高は、500円×500杯=25万円
変動費は、100円×500杯=5万円
変動費率は、5万円÷25万円=0.2×100=20%となります。
・1,000杯売った場合
売上高は、500円×1,000杯=50万円
変動費は、100円×1,000杯=10万円
変動費率は、10万円÷50万円=0.2×100=20%となります。
売上高が大きく違っても、変動費の金額に差が出ても、変動費率は同じになることがわかりました。
変動費の求め方
1つの損益計算書であれば、どの月の売上高をとっても変動費率は同一になります。
売上高が変動しても、変動費率は同じなので、変動費率を利用することで、売上高に応じた変動費を求めることが可能です。
変動費率を求める式を入れ替えると、変動費を求める計算式は、変動費=売上高×変動費率となります。
たとえば、変動費率が20%で、売上高が100万円だった場合、変動費はいくらかかるでしょうか。
100万円×0.2=20万円となります。
損益分岐売上高
損失が出るか、利益が出るかの境目となる損益分岐点売上高は、利益が0円になる時の売上高です。
利益は売上高から、固定費と変動費を控除することで求められます。
損益分岐点売上高は、利益が0円になる売上高ですから、売上高と費用(固定費+変動費)が等しくなります。
損益分岐点売上高=固定費+変動費です。
固定費は一定ですが、変動費は売上高によって変動します。
そのため、損益計算書などに記載されている具体的な変動費をそのまま使っても損益分岐点売上高は求められません。
まずは変動費率を求めます。
損益分岐点売上高の変動費=損益分岐点売上高×0.2となります。
固定費は売上によって変動しないので、先に提示された20万円です。
そのため、損益分岐点売上高=損益分岐点売上高×0.2+20万円で求められます。
この式を展開すると、損益分岐点売上高×(1-0.2)=20万円
損益分岐点売上高=20万円÷0.8=25万円と計算できます。
本キーワードの関連情報
今回のキーワードは、ITパスポート試験シラバスの、以下カテゴリに分類されています。
試験のご参考にもなれば幸いです。
カテゴリ:ストラテジ系 / 大分類1「企業と法務」 / 中分類1「企業活動」
3. 会計・財務
目標「企業活動や経営管理に関する、会計と財務の基本的な考え方を理解する。」
説明「企業活動や経営管理について、損益分岐点などの会計と財務に関する基本的な用語
の意味と考え方を理解し、身近な業務に活用する。」
(1) 会計と財務
・売上と利益の関係
① 売上と利益の関係
・用語と考え方
【活用例】
損益分岐点や利益率などの簡単な計算
参考・引用元資料
【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します。